いま話題のトレンドワードをご紹介する本企画。第12回のテーマはスッキリわかる「省エネ診断」です。言葉の意味、そしてその背景や関連する出来事を解説していきます。みなさまのご理解の一助となれば幸いです。
「令和4年度補正予算 中小企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業費補助金」での「省エネ診断」の受け付けは2024年1月上旬で終了していますが、資源エネルギー庁の「令和5年度補正予算における省エネ支援策パッケージ」には「省エネ診断」が含まれています。
・中小企業基本法に定める中小企業者
・会社法上の会社以外(医療法人、社会福祉法人、学校法人、NPO法人など)の場合、前年度もしくは直近1年間のエネルギー使用量(原油換算値)が1500kl未満の事業所
省エネ診断のメリットとして、次の3項目が想定されます。
●メリット① 短時間でニーズに応じた診断が可能
・エネルギーコストが気になる設備から短時間で診断可能(1設備のみの診断も可)
●メリット② 費用0円からのコスト削減が可能
・設備、機器の最適な使い方の提案
・温度、照度等の設定値の適正化
●メリット③ 省エネ取り組みの立案支援
・各設備のエネルギー使用量を把握することで、コスト意識の醸成や設備更新の判断材料とすることが可能
省エネ診断のプランは下記のとおりです。
●設備単位プラン
・空調設備、照明設備、ボイラー・給湯器、工業炉、受変電設備、冷凍冷蔵設備、コンプレッサー、生産設備、デマンド、給排水・排水処理において、最大2設備まで組み合わせ可能
●まるっとプラン
・節電プラン、節ガスプラン、組み合わせプランの3つから選択可能(1プラン原則3設備)
こうした診断および提案を安価(数千円~2万円以下程度)に行える制度はありがたく、日ごろの経費節減のためにも一度は受けておきたいものです。次項では、資源エネルギー庁が行うほかの省エネ診断サービス、現在利用できる省エネ診断サービスを見ていきます。
企業に与えるインパクトは?
資源エネルギー庁のパンフ「中小企業の皆様、「省エネ診断」を活用しませんか?」には、前述の「省エネ診断」(SII、環境共創イニシアチブが行うもの)、省エネルギーセンターによる「省エネ最適化診断」や「省エネ相談地域プラットフォーム(省エネお助け隊による省エネ診断)」という、3つの省エネ診断が紹介されています。3つの違いは、「省エネ診断の比較」で知ることができます。これらの違いをよく知り、自社に合った省エネ診断を行うとよいでしょう。
「省エネ最適化診断」も現在、受け付けが終了しており、こちらも次回の受け付け開始を待つ必要があります。「省エネ最適化診断」は、SIIの省エネ診断と同様の使用量の見える化、運用改善、高効率設備への更新提案などの他に「再生可能エネルギーの活用提案」が加えられているのが特徴です。
上記3つの省エネ診断のうち現在利用できるのは、「省エネお助け隊による省エネ診断」のみです。これは地域密着型の支援団体が行うサービスで、診断の他診断結果を基に省エネ取り組みを一緒に進めていく「省エネ支援サポート」を行っているのが特徴です。その他、省エネルギーセンターの「セルフ診断ツール」は、事業者が自ら無料で省エネ診断ができ、省エネに取り組むきっかけとして気軽に利用できます。
●省エネお助け隊による省エネ診断
「省エネお助け隊」は、経済産業省資源エネルギー庁の「地域プラットフォーム構築事業」で採択された地域密着型の省エネ支援団体。「省エネ取組の進め方」にある流れで進めるが、相談と打ち合わせは無料、診断と支援は事業所1割負担で行える。最寄りの相談窓口は「省エネお助け隊」サイトの窓口一覧から見つけられる(詳しくは「省エネお助け隊による省エネ診断のご案内」参照)。診断は、診断員1名/2名/3名の3プランがあり、規模や延べ床面積に応じて選べる。「省エネ支援」は診断結果に基づいて省エネ取り組みを一緒に進めるサポートプロジェクト。計測によるエネルギーロスの把握、コスト削減につながる設備のチューニングなどを行う。
●「セルフ診断ツール」
「セルフ診断ツール」ページで、業種、都道府県、エネルギー使用量、延べ床面積などを入力すると、CO2排出量が計算できる。その他「削減メニュー」として、同等レベルのエネルギー使用量の事業所に過去実際に提案した省エネ提案が表示され、「削減ポテンシャル」として、提案を実行した場合のシミュレーション結果が、原油/CO2換算、金額ではじき出される。
これから予測される課題は?
省エネ診断をきっかけとして、自社の現状を知り、専門家からの提案をもとに改善を進めていくと、自社のコスト削減はもちろん、脱炭素化、地球温暖化の防止にも貢献できます。脱炭素化に関しては、過去連載でも記事にしておりますので、是非ご一読ください。
資源エネルギー庁の実施する3つの省エネ診断は、安価に診断を行ってもらえる上、補助金申請時に有利になるなどメリットも大きいので、早めにどれかの診断を受けることをおすすめします。ただし、申し込みの際は混み合うこと、早めに予定数に達して締め切られることが想定されます。次回サービスは省エネ診断サイトに「省エネクイック診断」として公開されていますが、その詳細や受付開始日時はまだ発表されていないので(2024年3月上旬時点で「近日公開予定」とある)、情報を常にチェックし、開始されたらすみやかに申し込むのが賢いでしょう。
省エネ対策全般についての情報は、資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」にまとめられています。ここでは「家庭でできる省エネ」「事業者向け省エネ」「政策関連情報」の3つに分けて情報が整理されており、省エネ法関連、省エネ診断・支援情報、省エネ補助金情報もあるので、目を通しておきましょう。なお、民間でも省エネ診断や省エネコンサルティングなど、省エネ関連のソリューションが提供されており、必要に応じてベンダーに相談する、なども手です。
また、専門家に省エネ診断を行ってもらう以外にもエネルギーを節減できる大きな要素があります。それは業務効率化です。業務を効率化すれば単位労働コストが少なくなり、設備の稼働時間や消費するエネルギーが減ります。省エネ診断+省エネ取り組みと並行して、作業の自動化やITツールの導入など、業務効率化を行っていくと良いでしょう。省エネ診断はいわば、医者による健康診断のようなものです。優秀な医者は、病気を見つけ、治療をしてくれますが、自ら健康に気を付けることも重要なように、普段から皆で知恵を絞り、省エネを心がける姿勢をもちましょう。持続可能な未来の第一歩である省エネ診断、前向きに検討していくとよいでしょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです