人手不足はどの業種業態でも深刻な問題だ。長期的に見ても解消される見込みはない。増え続ける従業員の負荷を軽減するための手段として注目したいのが、ソフトウエア型ロボット、RPAである。多くの処理がデジタル化されている今、その効果は想像以上に大きい。製造業においてもRPAの導入で大きく生産性を向上させる企業が増えている。
定型業務の処理に最適なソフトウエア型ロボット
RPAは「Robotic Process Automation」の略称で、ロボットを活用した業務プロセスの自動化を意味する。ここで言う“ロボット”とは製造現場などに導入される物理的なロボットではなく、業務を処理するためにプログラミングされたソフトウエア型ロボットである。
RPAが得意とするのは、コンピューター上で処理されている定型的な業務だ。これまで人間が担っていた業務を、RPAに置き換えることで生産性は飛躍的に向上する。例えば、Webページの特定のデータを繰り返しコピー&ペーストするような作業は、人では考えられないスピードで正確に処理できる。DXによってデジタル処理へのシフトが進めば、RPAの導入は比較的容易で高い効果が期待できる。製造業であれば生産・出荷量の記録、在庫数の増減管理といった業務に適している。
さまざまな定型業務はRPAによって自動化できる
業務の自動化によって工数や作業負荷を大幅に削減…
食品製造業のA社では、大手スーパーから送られてくる注文書を受け取り、自社の集計用Excelシートに転記して、販売管理システムに投入する作業を行っていた。この作業は毎日発生し、祝日も含めて1日に4時間以上、1カ月で40時間以上の時間を割いてきた。
注文データはPDFやCSV形式で届いていたので、同社はこれまで手動で転記していた作業をRPAに代行させ、販売管理システムに直接転記することにした。その結果、従業員による転記作業はなくなり、注文書のデータを全自動で瞬時に販売管理システムへ反映できるようになった。
また、A社と同様に食品関連の製造業を営むB社では、販売管理システムへの入力のみならず、作業指示書の作成も自動化した。同社はこれまで、取引先から受け取ったExcelファイルのデータを手作業で販売管理システムに入力し、それを基に作業指示書を作成して製造部門と配送部門に渡していた。RPA導入後はExcelファイルから抽出したデータを販売管理システムに自動で転記し、作業指示書は夜間に自動作成するようにした。できあがった作業指示書は目視でチェックした上で、製造部門と配送部門に渡すようにしたのである。これらの作業には1カ月当たり75時間もかかっていたが、RPAの導入によって月に10時間まで削減。人為的なミスも減り、大きな業務効率化につなげられた。
昨今はプログラミングの経験がなくとも容易に操作できるツールや、業務の自動化をサポートするさまざまなサービスがそろっている。自社の生産性を向上させ、人的リソースを有効活用するためにも、RPAに任せられる業務がないかどうかを洗い出してみてはいかがだろうか。
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