企業の命題であるDXに向けてどう取り組むか。組織のあり方を含め、現状の業務内容や業務プロセスを分析し、問題点を見える化して改善するといった地道な作業が必要だ。効率化が必要なのは人事や会計、総務などの管理部門だけでない。製造・生産や販売、物流・配送など現場を含めた業務効率化の取り組みがDXのカギを握る。
製造・生産部門等の主な着眼点
製造・生産現場のDXに向けた業務効率化の取り組みを支援するツールの1つにワークフローマッピングがある。ワークフローというと、物品購入などの申請、承認、決裁といった一連の流れ(フロー)の処理を自動化するワークフローシステムが知られており、既に導入している企業もあるだろう。
ワークフローマッピングは、生産現場などのワークフローをプロセスごとに分析、可視化して業務の問題点や非効率な作業を洗い出し、改善するための手法だ。プロセスの改善点を見つけるプロセスマッピングとも呼ばれる。プロセスマッピングの手法として、矢印や円などの記号を使って各プロセスを視覚的に表現するフローチャートがあり、目にしたことのある人もいるだろう。生産現場の各プロセスを担当するメンバー同士でフローチャートを見ながら、改善点を把握するといった活動を支援する。
フローチャート、プロセスマップ、ワークフロー図を作成し、各プロセスの問題点を分析、見える化するツールも提供されている。例えば生産現場全体のモノの流れに問題がある場合、各プロセスのどこがボトルネックになっているのかをワークフローマッピングを活用して見える化。非効率なプロセスや重複するプロセスを見直すことにより、生産現場の業務効率化が可能だ。また、部材の購買管理や在庫管理、生産管理システムなどと連携させ、企業の競争力の強化や生産現場のDXにつなげられる。
店舗の売り上げや在庫管理などを効率化…
小売店や飲食業などの業務に欠かせないのがPOS(販売時点情報管理)システムだ。スーパーなどで見かける据え置き型POSレジの他、パソコンにPOSシステムをインストールするタイプ、カフェなどで見かけるタブレット端末やスマートフォンにPOSシステムのアプリをインストールするタイプなどがあり、POSの機能をクラウドサービスとして提供する形態も増えている。
POSシステムの基本は、いつ、どんな商品が、いくらで、どれだけ売れたかといった商品販売時点の情報管理を行うことだ。店舗のスタッフは商品のバーコードをスキャナーで読み取ったり、POSレジのタッチパネルを操作したり、簡単に会計処理が行える。最近は消費者自身がレジを操作するセルフレジのコンビニやスーパーなどもあり、スタッフの人材確保や勤務時間の短縮などが求められる小売業界の課題に対応している。
POSデータの一元管理や分析が難しかった時代には、各店舗の店長などが手作業で販売データを集計して本部に送るなど手間と時間がかかっていた。POSシステムの普及により、販売データはサーバーやクラウド上で一元管理できるため、本部はネットワークを介して複数店舗のデータを参照ながらリアルタイムに売り上げの把握や在庫管理、販売計画の立案が行えるなど、店舗運営に関わる業務の効率化が可能だ。
また、財布に代わるスマホアプリなどの機能拡充とともにPOSシステムも進化。例えばキャッシュレスのバーコード決済の他、電子クーポンの発行などのプロモーション機能を備えるタイプもある。クラウドサービスであれば、店舗側は機能追加にも柔軟に対応でき、POSシステムを起点にした販売戦略やマーケティング戦略の展開も可能だ。
物流業務を効率化する配送管理システム
物流の2024年問題が深刻化している。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働上限規制が適用され、労働時間の短縮と人材不足が相まって輸送能力が低下し、モノが運べなくなる事態が懸念されている。長時間勤務の要因となる、トラックドライバーの荷待ち時間を短縮するための出荷・受け入れ体制の見直しや、荷主と運送事業者が協力して情報の共有化を進めたり、DXによる業務の効率化を促進したりすることが求められている。
物流業務を効率化する配送管理システムの活用もその1つだ。これまでベテランのスタッフやドライバーの経験を頼りに手作業で行っていた配車・配送計画の立案をシステム化。トラックの種類や最大積載量、ドライバーなどの情報を登録しておくことで、荷主からの配送依頼があった場合にも、適切な配車・配送計画を作成できるようになる。
また、トラックがどこにいるかといった位置情報や作業の進捗状況などを把握できる機能や、運賃の計算や請求処理の機能などを備えたシステムもある。クラウドサービスとして提供される配送管理システムもあり、物流・配送業務の効率化、DXに向けた取り組みが課題の事業者をサポートする。