この数年で経営環境は大きく変化している。長年の低成長、安定した物価、伸びない賃金といった状況から一変し、物価は上昇し、大手企業では数十年ぶりといった大幅な賃上げも報じられている。人手不足が深刻な中では、中小企業でも賃金を引き上げないと働き手を確保しにくい。一方で仕入れコストや光熱費、人件費などの上昇分を、商品やサービスの価格に転嫁できるかというと、そうは簡単ではない。すなわち、企業が生き残るためには、売り上げ拡大だけでなく低成長時代を上回るような経費削減も求められるわけだ。
もちろん、これまでも経費削減に努めてきたからこそ今の時代に生き残っているわけで、これ以上の経費削減は簡単ではない。単に10を9にするという経費削減ではなく、さまざまな業務や手続きを根本的に変革していく必要がある。
ここでは8つの経費削減アイデアを紹介する。ヒントになる部分を有効に活用してもらいたい。また、どのようにヒントを実現したらいいかを迷うようなときは、専門の事業者などに問い合わせてみることも1つの解決策になる。
(1)請求書を電子化する
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が求められるようになり、請求書の発行業務の変革が必要になってきた。インボイス制度への対応だけでも、適格請求書発行事業者の登録番号を記載し、適用税率や消費税額を明記する必要があり、業務が増えたと感じている経営者や現場担当者は多いだろう。さらに、電子的に帳簿を保存することも求められるようになり、手間が増加しているのが現状だ。そうした請求書関連の業務負荷を軽減する第一歩が、請求書の電子化だ。電子化した請求書を発行できるクラウドサービスなどが多く提供されている。紙の請求書から電子の請求書へ切り替えるだけで、請求書の発行、郵送から受け取った請求書の保存、支払いまでの業務を効率化し、コスト削減につなげられる。郵便料金が大幅に値上がりすることが発表された今だからこそ、請求書の電子化は効果が目に見えやすいソリューションとして活用していきたい。
(2)法人カードの発行で振込手数料を削減
経費精算も手間とコストがかかる業務の1つ。従業員が建て替えた経費を、伝票に従って精算し、口座に振り込むには、少しずつではあっても手間やコストが蓄積していく。経費削減の2番目のポイントとしては、法人カードの活用が考えられる。クレジットカードを法人名義で契約し、従業員にカードをもたせることで、会社の経費はカードで決済すれば精算業務が不要になる。伝票処理の手間や振込手数料をなくした上で、法人カードのポイントが蓄積できれば一石二鳥だ。
(3)経理業務をアウトソーシングする
経理には専門性が必要で、決算対応などの季節要因がある。優秀な経理担当者を張り付けて仕事をしてもらっていても、繁忙期にはオーバーワークになることもある。かといって、繁忙期に対応できるように経理担当者の人材を常に潤沢に確保しておくのはコスト負担が大きい。そこで抜本的な対策として、経理業務を外部にアウトソーシングして、社内には必要最低限のコントロール機能だけを残すことを考えてみたい。全面的なアウトソーシングサービスの利用はもちろん、業務の一部をクラウドサービスに移管するだけでも経費削減につながる。
(4)経費精算システムの導入
熟練の担当者がExcelを駆使して経費精算を行う――。中小企業にはまだ残る光景だろう。しかし経費精算の現場でExcelが幅を利かせているようなら、一刻も早く経費精算システムを導入したい。クラウドサービスなどで、多彩な経費精算システムが提供されている。従業員の手入力をなくせるAIを活用した交通系ICカードや領収書読み取り機能が備わっていたり、ワークフロー、自動仕訳の機能などが用意されていたりと至れり尽くせりだ。規約違反をチェックできる機能なども活用すれば、従業員も経理担当者も業務が格段に効率化でき、経費削減に効果が見込める。
業務そのものの見直しや変革を進める
(5)不正な経費精算を防ぐ
業務の側から見ていくと、上記のシステムの活用の価値が改めて浮かび上がる。経費精算システムを導入することで、経費精算の規約違反をチェックすることができるようになり、不正な経費精算を防げる。領収書もスマホで撮影するだけで登録でき、ペーパーレス化と不正防止の双方の側面から効果が期待できる。
(6)最短経路・最安の交通費を支給しているかチェック
同様に経費精算システムの活用で、交通費や定期代金の精算業務の無駄をなくすことが可能になる。交通系ICカードやスマホのモバイルサービスと連携させることで、交通費を間違いなく精算可能になるほか、定期券区間との重複の申請に対して正しい支給額を自動計算するような機能を備えるシステムも多い。
(7)不必要な接待をなくす
コロナ禍で激減した接待が、復活する傾向がある。接待なしでも業務が回っていたことを考慮し、不必要な接待を減らすことをトップが率先して徹底することで、経費削減につなげていきたい。もちろん、必要な接待はしっかり行う優先順位付けが不可欠だ。
(8)社用車は法人カーシェアや中古車に変更する
接待と並んで、当然と思っていたコストの1つに社用車がある。時代は所有から利用へと変化している。法人カーシェアや中古車の利用なども検討し、コスト削減に努めたい。対面の打ち合わせのために社用車で駆けつけるよりも、オンライン会議などを活用することで迅速で丁寧な対応ができることも考え合わせれば、社用車の台数などにもメスを入れられるだろう。