企業競争力の確保を考える上で、いまやデータ活用は欠かせないファクターとなりつつある。日常の業務遂行の上でも、データをいかに効率的に管理・保管するかも企業にとって重要事項となっている。その課題解決のうえで注目を集めるのが、クラウド上のデータ格納スペース「クラウドストレージ(オンラインストレージ)」の利用だ。その実態について、日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター2817人を対象に調査を実施した。
企業規模でクラウドストレージ導入に明暗も
まず社内におけるクラウドストレージ導入を聞いたところ、48.8%の企業が「導入済み」と回答。導入率を従業員規模別で見ると、99人以下の企業では26.4%。最も導入率が高い1万人以上の企業の74.4%と比べ48.0ポイント差となった。導入率トップの1万人以上の企業に続き、1000~9999人規模の企業が61.6%で続くなど、従業員規模が大きい企業ほど導入率が高い傾向がうかがえる(図1)。
【図1 クラウドストレージ導入状況(従業員数別)】
「OneDrive」がビジネス利用1位に、他サービスも伸長
導入サービスについて聞いたところ、最も多く選択されたのが、「OneDrive for Business」(38.9%)で、2位が「Google Drive」の19.9%となった。その他、3位に「box」(20.1%)、という結果になった(図2)。この点、前回と比較するとOneDrive for Businessが7.8ポイント減少し、Google Driveが2.4ポイント、boxが5ポイントそれぞれ上昇している。
【図2 クラウドストレージの種類】
社内・社外を問わず「大容量データの共有」に高い需要…
クラウドストレージを使用するうえで「よく使う機能・便利な機能」について聞いたところ、全体の8割近くが「大容量データの社内共有」と回答(75.5%)し、最も多い項目となった(図3)。同項目は前回と比較すると8.1ポイント増となり、特に大企業での需要増加が見て取れる。同項目を従業員別に見ると、99人以下の企業が51.9%と最も低く、1万人以上が84.1%で最も高い結果となっている。
2位の「ファイルバックアップ・復元機能」は、全体で45.1%(前回比4.5ポイント増)。企業規模別では99人以下の企業の需要が最も多い(51.9%)。3位には前回4位の「大容量データの社外共有」(26.7%)が浮上し、「デバイス連携機能」は4位となった。社内外の連携の需要増が背景として考えられる。
【図3 クラウドストレージでよく使う機能等(従業員数別)】※上位5項目
継続して「大容量データの保存・共有」が満足度の決め手
クラウドストレージを導入してよかった点について尋ねた。全体として最も多かったのは、「大容量データの保存が可能」が60.2%、次いで「大容量データの共有がスムーズ」が54.4%となった。共に前回比8.4ポイントの増加となった。3位には「セキュリティが充実して安心して利用できる」(33.0%)が、4位は「ファイルバックアップ機能」(30.1%)がランクインした(図4)。
項目別に見ると「大容量データの保存が可能」では1万人以上の企業で最も選択率が高く(69.9%)、99人以下の企業で選択率が最も低く47.0%となった。以前の調査から引き続いて企業規模との相関関係が強く出た。「大容量データの共有がスムーズ」は100~299人の企業が最も高いスコア(61.7%)となった。
【図4 クラウドストレージを導入してよかった点】
「セキュリティ機能」に加え、「検索機能」に高いニーズ
最後にクラウドストレージで必要、または強化してほしい機能についても聞いた。1位は前回と変わらず「セキュリティ機能」(39.9%)がランクイン。2位は「検索機能」が27.0%を獲得して急浮上(前回4位)し、「データ容量の最大値」(今回は25.6%で3位)を追い抜く形となった(図5)。クラウドストレージに対しては、底堅い“セキュリティ需要”があるものの、蓄積し続けるデータの利便性を高めるためにも、その検索性がビジネスの中で求められているのが分かる。
【図5 クラウドストレージで強化してほしい機能】※上位5項目
働き方の多様化などで社内外のデータ連携の必要性が企業に認識されつつある。そのカギとなるクラウドストレージには、セキュリティ機能だけでなく検索性やデータ容量の最大化、ファイルの共有・共同編集に以前に増して需要が集まっていると考えられる。膨大なデータを柔軟に活用し、いかに自社の競争力を高めるか――。今回の調査からは、こうした課題解決に対するクラウドストレージの各種機能や利便性向上への期待が見て取れた。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター2817人を対象に2023年12月に調査