業務のデジタル化が課題とは知っているものの、何から手を付けたらいいのか……。そんなIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は、改正電子帳簿保存法にも関係するスキャニングだ。
「社長、スキャニングした文字がちょっとゆがむようになったので、スキャナーを買い替えてもいいですか」(総務兼IT担当者)
「ランニングだな」(社長)
「(何か買おうと言うと、すぐとぼけるんだよなあ)。ランニングではなく、スキャニングです。スキャナーは紙の請求書などを読み取ってデジタルデータに変換する機械ですよ」。
「おいおい、わしが言いたいのは『ランニングコスト』だ。どうなんだ。わしにも分かるように説明しなさい」
出番が増えるスキャニング
スキャナーは紙の文書(帳票)や写真などをセンサーで読み取り、デジタル画像情報(PDFなど)に変換してパソコンなどに保存します。スキャニング専用の機器の他、複写機、プリンター、スキャナー、FAXといった機能を統合した複合機も提供されています。改正電子帳簿保存法により、スキャニングを活用する出番が増えてきました。
紙の書類をスキャニング。OCRでテキストデータに
Q スキャニングの出番が増えるとはどういうことですか…
改正電子帳簿保存法では、紙で受領・作成した書類を画像データで保存する「スキャナー保存」が認められています。要件を満たしてスキャンすれば原本の保存が不要になります。スキャニングによる経理業務の効率化が期待されています。
Q スキャニングとOCR(光学文字認識)は何が違うのですか
スキャニングは、紙の請求書などを読み取って画像データとして保管しますが、画像データのままでは活用が困難です。OCRはスキャナーで読み取った画像データの文字(テキスト情報)を認識してデータに変換します。例えば、紙の請求書に記載された取引先名や商品名、金額、消費税額などのテキスト情報をデータに変換してデジタル帳票を作成するなど、業務効率化に効果があります。
Q スキャナーやOCR導入の注意点はありますか
スキャナーを購入・買い換えるのであれば、高精度の読み取り・画像データ変換が可能なタイプを選ぶといいでしょう。また、OCRを利用する場合、手書きの文字や数字がくせ字で読み取りにくい場合もあります。AIを活用して高精度の文字認識が可能なAI OCRのクラウドサービスも提供されています。
ランニングコストは製品・サービスによって違います。初期費用のほか読み取り枚数・項目によって変動する製品・サービスが多いようです。自社の業務に合ったスキャナーやOCRサービスはどれになるかをITサービス事業者に相談するといいでしょう。
マニュアル作成でブーイングを防止
「社長、スキャニングのことを理解していただけましたか」(総務兼IT担当者)
「スキャニングが経理などの仕事に役立つことは分かった。ところで、うちも電子帳簿保存法に対応しているんだろうな」(社長)
「OCR付きスキャナーへの買い換えが必要だと思います。それに業務フローが変わるので、社員が戸惑わないようにマニュアルを作成しているところです。」
「スキャンだけに、社員から総スカンを食わないように、しっかり準備しなさい」