脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第82回)
ブルーライト対策にはうな重?
公開日:2017.09.21
なかなか進まなかった食品ロス削減に光明が差した。「人の気持ち」を踏まえたAI(人工知能)が、精緻な需要予測を可能にした。
本来食べられるはずの食品が廃棄される「食品ロス」。世界では毎年約13億トンが廃棄されており、社会問題となっている。これまでなかなか進まなかった食品ロス削減に、AIが威力を発揮している。
日本気象協会(東京都豊島区)は2017年3月に、企業が生産・販売する商品の需要を予測する専門部署を立ち上げた。AIを活用し、気象データと過去の販売データから最適な需要量をはじき出すサービスである。
同社のサービスを活用し、食品ロスの削減に取り組んでいるのが、豆腐メーカーの相模屋食料(前橋市)である。
豆腐は賞味期限が短く、在庫を確保するのが難しいため、食品ロスが発生しやすい商品である。鳥越淳司社長は、「できる対策はすべてやり尽くした」と限界を感じていた。かつては、「当日作った豆腐しか棚に並べない」というスーパーも多く、スーパーに出向いて賞味期限まで販売してもらえるように頼み込んだ。また、自社の生産設備や包装を改良し、これまで4~5日だった賞味期限を15日程度にまで延ばした商品も開発した。
こうした取り組みは一定の成果があったが、決定打とはならなかった。豆腐は、天気で大きく販売量が左右される。鳥越社長は、「1日の売り上げが前日の20倍になったり、20分の1になったりすることがざらにある」と言う。品切れを恐れて過大に生産し、大量の食品ロスが発生していた。
この悩みに応えたのが、日本気象協会のサービスだ。過去3年分の相模屋食料の販売データと気象データから、AIを使って需要を予測する。
豆腐の中でも販売量の変動が大きい寄せ豆腐で、需要予測を活用することにした。週間の気象情報に加えて、豆腐の売れ行きのレベルを5段階で示す「寄せ豆腐指数」の提供を受けている。詳細な販売予測個数を提供してもらうことも可能だったが、実際の販売量は、天気だけでなく、メーカーのキャンペーンやスーパーの特売なども影響する。最終的な生産量は自社の担当者が決めたいという要望を伝え、売れ行きのレベル感を示す情報を提供してもらうようにした。
AIを使った需要予測情報の活用により、導入前と比べて寄せ豆腐の廃棄量を約30%削減できた。鳥越社長は「ここまで削減を積み上げられるとは思わなかった」と驚く。今後、寄せ豆腐以外の商品でも効果を検証していく。
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