ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2018.07.04
実例からドラッカーのマネジメントを学ぶ連載。第28回からスタートした米菓メーカーの三州製菓の取り組み、5回目になります。社内の味覚テストで女性社員の味覚の確かさが証明されたこともあり、斉之平社長は思い切って社員にいくつかの権限を委譲することにした。さらに海外の企業からヒントを得て、「一人一研究制度」をスタート。どのような研究成果が見えてきたのだろうか?
自社との共通点も発見した。マルコム・ボルドリッジ賞のトロフィーが置かれているのは社員の休憩室。三州製菓が一人一研究の金賞受賞者の名前を食堂に掲げるのと同様、社員の功績を皆の目に触れる形でたたえていた。
この視察で、心理学者のエドワード・デシ教授が行った、いわゆる「デシの実験」について知った。
実験では、大学生を2グループに分け、難しいパズルの課題をいくつか与えた。1日目は両グループとも同じようにパズルを解き、2日目は片方のグループに限って、パズルが解けると1ドルの報酬を与えた。3日目は1日目と同様、どちらにも報酬を与えなかった。
すると2日目に報酬を得たグループは、その間だけモチベーションが著しく高まったが、報酬がなくなった3日目はガクンと落ちた。一方、報酬ゼロの学生は一定のモチベーションを維持した。
つまり、金銭的な報酬はモチベーションにマイナスの影響を与えかねない。報酬という「外発的動機付け」が、「自分が面白いと思うからやる」という「内発的動機付け」を弱める恐れがある――。
斉之平社長はハッとした。
自分もこれまで社員の主体性を大事にしてきた。しかし、デシの実験が示すように、外発的動機付けが内発的なモチベーションを阻害するという認識は乏しかった。
ドラッカーはこう記す。「知識労働者の動機付けは、ボランティアの動機付けと同じである。周知のように、ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事そのものから満足を得なければならない」(『明日を支配するもの』)。
視察から戻った斉之平社長は、一人一研究のあり方を見直した。
テーマ設定はもともと自由だったが、現実には「せんべい反転機」を筆頭に、業務改善を目的としたものが目立った。社員には「会社のための研究」という意識が強く、「自分が面白いから研究する」という姿勢は弱いことがうかがえた。
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佐藤 等(佐藤等公認会計士事務所)
佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会理事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー[事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。
【T】
実例で学ぶ!ドラッカーで苦境を跳ね返せ